オープンイノベーションって本当に必要?

すっかりおなじみの言葉『オープンイノベーション』。8 割近い日本企業がオープンイノベーション活動を行っているといわれています。皆さまの会社でも何かしらのオープンイノベーションを行っているのではないでしょうか。しかし、皆がやっているからといって安易に「オープンイノベーションは重要」と考えていいのでしょうか?そもそも『イノベーション』って何でしょう?

歴史を遡ると、イノベーションは 20 世紀初頭ヨーゼフ・シュンペーターによって『既存の知の新結合』と提唱されました。イノベーションの一つ目のステップは「知」を探索し「既存の知」をうまく組み合わせることで事業の芽を生むことです (=『知の探索』)。続く二つ目のステップで、生まれた事業の芽すなわち「既存の知の新結合」を発展・改善させて事業として成長させます (=『知の深化』)。環境変化が著しい時代では、速く、多く、かつ質の高い新規事業の芽であるイノベーションの創出が重要であることは、皆さん納得するところでしょう。オープンイノベーションは、知の探索を社外で行うことで「既存の知」の幅を大きく広げるという狙いがありました。

オープンイノベーション=ダイバーシティ?!

では、知の探索を社内で行いつつ知の幅を広げることは不可能なのでしょうか? 実は、可能です。声高に叫ばれて久しい『ダイバーシティ』。ダイバーシティは社内の知の幅を広げることが本来の目的でした。日本では女性の活躍 = ダイバーシティのように誤解されがちですが、元々は性別や国籍、文化や価値観など多様性を保持することで、企業として多様な「知」を持つという概念でした。つまり、知の探索を社内で行うと「ダイバーシティ」と呼ばれ、社外で行うと「オープンイノベーション」といわれます。「知の探索」という目的は共通しているのです。

さて、日本企業を振り返るとどうでしょう。オープンイノベーションを行っている企業は 8 割存在する一方、成果を上げている企業は 3 割に届きません。その原因として「人財の不足」を挙げている企業が多いですが、具体的にはどのような人財が必要なのでしょう? そのヒントは「知の探索」という共通目的を持つダイバーシティにあります。多様な価値観を受け入れ、共に働くことのできるダイバーシティ人財は、背景の異なる他企業と協働するオープンイノベーションを行う上でも必要不可欠な役割を担うでしょう。オープンイノベーションとダイバーシティはその目的と人財を共有するため、どちらか一方に取り組むのではなく両輪で進めていくことによって、イノベーション創出をより加速することができるでしょう。