働き方改革における組織の生産性向上における真のハードルは…?

2017年の一大テーマ『働き方改革』。経営者が年初の抱負を語る際の頻出テーマであり、安倍首相も「(2017年は)働き方改革、断行の年にする」と語っています。働き方改革は『同一労働・同一賃金』と『長時間労働の是正』という二つの柱に分けられます。特に後者は『生産性向上』という言葉とともに、多くの雑誌・新聞で特集が組まれ、多数の書籍が本屋にあふれ返っています。さまざまな見地から全く異なる主張が散見されるので、少し整理してみましょう。

前提として、生産性向上は「個人の対策」と「組織の対策」に分けられます。多くの書籍に見られるような「仕事を断る勇気を持ちましょう」「集中タイムは電話を取らないようにしましょう」という取り組みは、個人の生産性向上策です。ただし、全社員が各々実行しようとすると、組織の生産性はむしろ悪化するでしょう。そこで会社としては足並みを揃え、組織の生産性を向上させるための施策を明確に打ち出さなければなりません。実際に「ノー残業デー」「コアタイム設置」などの具体的な施策を実行し、一定の成果を実現している会社も少なくないと思います。一方、抜本的な対策の難しさも実感されていることでしょう。

働き方改革における組織の生産性向上を阻害する真の壁は、成果が特定されていないことです。会社として、部門として、個人として、どのような成果が期待されているのかが不明確だと、抜本的な生産性向上は実現できません。なぜなら、成果の定義が曖昧だと、どのような活動が成果に貢献する業務なのか、判定できないからです。

一石二鳥の対策:現場への戦略の落とし込み

現在の経営環境も、成果の特定をさらに困難にしています。多くの企業における中期経営計画では「変革」や「新規事業」といった言葉がよく目につきます。転換期において「現在のため(既存業務)の成果と将来のため(新規業務)の成果をどうバランスさせるか定まらない」というのが実情ではないでしょうか。結果的に、既存の成果指標を部門や社員に当てはめてみたものの、なかなか実態にそぐわず、場当たり的な対応になってしまっている企業が実に多いように思われます。

経営層が一枚岩となって、戦略立案をすることはとても重要です。それ以上に重要なことは、その戦略が現場にしっかりと落とし込まれることです。そのためには、中長期にわたって求められる成果を事業部・現場単位に分解し、現場における業務の優先順位を明確にすることです。経営陣のベクトルを揃えて初めて、社員のベクトルが揃い、無駄な業務を減らせます。戦略を現場まで浸透させることで、事業改革が進むだけでなく、働き方改革まで実現する。これが変革期における生産性向上の肝だと考えられます。